中学生の頃、時刻表を読むことが好きでした。

その頃は、当然お金もなく旅行する年代でもなく、まだ幼い少年でしたので、校区外(当時学校が決めていた子供だけで出てはいけない地域)という決まりがあり、今考えるとそれはそれで、我々少年を守ってくれていた気がします。
当時は隣の中学校の生徒と「お礼参りや!」みたいな喧嘩が絶えなかったのも確かで、無用な接触は避けていたのかもしれません。

そんな時代ですから、余計に外の世界への憧れは強かった気がします。
インターネットなど無い時代ですから、情報取得の方法が限られていました。時刻表はそんな閉ざされたモヤモヤ感を打破するツールのひとつでした。
行ったことのない駅を目指して、時刻表で旅を作っていきます。乗り換え時間、駅弁はどこの駅で購入、待ち時間の間にトイレへ・・・などと、まさしく時刻表とにらめっこしながら、まだ見たことのない、行ったことのない、車窓の風景や駅舎を思い浮かべていたものです。

中学生ですから、ただひたすら、行ったことのない、見たことのない世界への憧れがそんな旅に想いを傾注してたのだろうと思います。
それは、叶わない片思いのようなもので、想いは強いけれども、どうしようもない、もどかしいそれに似ているかもしれません。

子供が大人へなる道のりの中で、脱皮すべき悶々とする時期、まさしく思春期とはそんな時期かもしれないと、思い返すとそんな気がします。

大人になって、ある程度自分の自由な時間とお金が有るにも関わらず、日々の忙しさにかまけて、中学生時代の想いを忘れてしまっています。
車窓を見る余裕や、駅舎でちょっと休憩するとか、
各駅停車ができない時代に生きているような気がします。

できれば、もう少し、時刻表片手にあの頃の憧れを抱きながらワクワクした旅を実際にしてみたいと思います。
時刻表にはそんな楽しい旅がいっぱい詰まっています。
あの頃は東北でも、北海道でも九州でも、また四国の山奥でも線路が繋がっている所へは自由に行っていました。

そう、あの頃憧れていたのはきっと自由なんでしょう。
この校区外から出たいという自由な世界に憧れていた、それが時刻表の旅だったんだと思います。

今日は10月5日は、時刻表の日だそうです。たまには、ネットで時刻表を調べるのではなく、時刻表の本で自由な旅を楽しむのも、いいかもしれませんね。

株式会社ニューズさんの写真

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